ソフィアデンタルクリニック分院 歯内療法科

SOPHIA DENTAL CLINIC - Department of Endodontics

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マイクロエンドは本当に効果があるの?

根管治療後のトラブルの原因

神経を取るなどの根管治療を受けて、数年したら「虫歯にもなっていないのに痛みが出てきた。」という経験をされた方も少なくないでしょう。 治療した歯が再び虫歯になっていたら話は別ですが、なぜこのようなことが起こるのでしょうか? まずは下の写真を見てみましょう。


Vertucci. Endod Top. 2005;10:3-29.

歯を透明にして根管の複雑性を表した標本は、根管がまっすぐに一本だけではなくそれぞれがつながったり、分かれたりして不規則な形をしていることを示している。

この写真は特殊な処理をして作ったヒトの歯の標本の一例で、紫色に見えるところが歯髄が入っている部分です。 このような研究は世界中で多く行われていますが、どの研究データからも「根管は単純な形をしているから安心です。」というような結果は出ていません。 複雑な根管の中を人の手の加えられる範囲で徹底的にきれいにしてあげないと、根管治療は失敗につながります。 また、このような複雑な形をした場所に細菌が入り込んだら増殖する一方です。 増殖した細菌は根の先の方にまで進み、その結果として根の先に膿を作ります。 膿は周りの顎の骨を溶かし、その状態でレントゲンを撮影すると根の先の方が黒く写ってきます。 このようなことから、細菌が歯の中に入り込まなければ良い訳ですので、それを防止しなければなりません。 その防止策がラバーダムというものです。ラバーダムもただ付ければ良いというものでもなく、 治療中に唾液が歯の中に入り込まないように取り付けなければなりません。 当院では、そのような環境を作ることは歯内療法を行う上での大前提であると考えています。 ラバーダムを確実に取り付けた後も、治療を行う周辺には二種類の消毒薬を塗布して徹底的な除菌対策を行っています。 「ラバーダムの重要性についてのビデオ解説へ

いままで根管治療で苦労をした、またはその最中である患者さんは、根の治療って大変だなと思われているでしょう。 それは歯科医師側もそうです。なぜなら、見えないところを手探りで経験と勘によって治療することはほぼ運任せの状態になってしまうからです。 ですから、歯根の先に膿が溜まっている歯の治療に多くの回数と時間を費やし、様子を見ながら治療するということが多々あります。 こんなに回数と時間を掛けたのに症状が改善せず最終的に抜歯の宣告を受けると、残念でたまらないでしょう。 主治医の先生も手を尽くしたのに抜歯の宣告なんてしたくないはずです。


Peters. JOE. 2004;30:559-567.

ニッケルチタンファイルという特殊な器具を使っても触れられない部分(赤色)があることを示している研究データ

突然ですが、ボトルシップってご存知でしょうか?ガラス瓶の中に模型船があるものです。 例えとして適切かは分かりませんが、もしそのガラス瓶が不透明で中が見えない様な状況であったならば模型船は上手く組み立てられるでしょうか? もし組み立てられるとしたら、気の遠くなるような練習をするか、超能力を持っているかでしょう。 根管治療も見えないところに手を加えるという意味では同じかもしれません。 歯科医師は人体組織に直接手を加えるのですから、大きな分野で考えるとほぼ全ての歯科医師は外科の分野の治療していることになります。 外科手術の基本は「術野の明視」です。すなわち、手術する部分を確実に見ながら処置をしなければならないということです。 現代医学では技術の進歩によって、大きく切開して手術をするということが少なくなってきています。 しかし、そのような場合にも内視鏡などのカメラで手術部位を見ながら治療します。 もし、あなたが「手探りで内臓の手術をする」とお医者さんに言われたら、治療を受けますか?

以前の治療の失敗の原因が見て取れる。Gで示したものが以前に処置された根管の部分で、Fで示したところが処置されなかった根管の部分である。盲目的にこの部分を処置することは難しい。

近年、歯科医療の分野も治療器具や材料の開発に伴う飛躍的な進歩があります。 歯科手術用実体顕微鏡(歯科用マイクロスコープ)もそのうちのひとつです。根管治療時のマイクロスコープの使用はアメリカでは義務となっているようです。 この装置が根管治療時に必須となることは常々実感しておりますが、マイクロスコープ自体は治療器具ではありません。 術野を精細に見えるようにして明るく照明してくれる装置に過ぎず、なおかつそのような状況で治療を行う細かな治療器具がどうしても必要になりますし、 なにより大前提となるのは目に見えない細菌に対するコントロールとなります。 いままで悩みの種だった症状の原因がいたって簡単に見えてきますので、治せるチャンスは格段に増えるでしょう。 歯内療法、根管治療の成功は、確固とした治療コンセプトと、専門的な知識と技術によってなされるものと考えられます。


根管治療の成功率について

医療の分野では外科処置いわゆる手術をした際の成功率や生存率が統計されています。 人間が手を加えるのですから、絶対に100%成功することはないでしょう。 しかし、私を含め手術を受ける立場やその周りの人たちとなっては、どうしても成功してほしいものです。 外科処置を行う立場の先生たちは、自分の行う手術の成功率が高くなるように日々、様々な努力をしているはずです。 歯内療法、根管治療においてもやはり人体組織に手を加えて処置をするのですから、 大きな範囲で考えると外科処置であると同時に成功率の話も伴います。 世界中の根管治療に関する統計学的データを集計して非常に簡単に要約すると、 抜髄では90%、初回感染根管では80%、感染根管再治療では70%というデータとなっています。 統計的なデータはそのような傾向があるという指標になり、その治療をする前には患者さんも歯科医師も双方が理解していなければなりません。 治療コンセプトを守って精密な根管治療をしたとしても、症状が改善しない場合や、一年後に再検査をした時にレントゲン的に症状が残っている場合も想定されます。 一度、精密に徹底的に根管治療をした歯の場合には再び根管治療を行うことはありません。すでに人間の手が加えられる部分については手を施したからであり、 精密な根管治療を行ったとしても手の届かないところや、または根管の外側に原因がある場合には外科的に原因を取り除く必要があります。 これを歯内療法外科(歯根端切除術)と呼びます。

治療後に実験的に歯根の先端を切断した状態であり、精密に治療を行っても未処置の部分として残っている部分が青く染色されている。人間の手の加えられる部分が如何に少ないかが分かる一例。

なるべくなら避けて通りたいですが歯を残す手段としては科学的にみても的を得た治療であると考えられます。 従来から行われてきた歯根端切除術は成績が悪かったのですが、現代のマイクロスコープと生体適合性の良い材料を使って行う精密な歯根端切除術は驚異的な成功結果が得られるとのデータもあります。


コラム : 医療の進歩は飛躍的に進んでおり、器具や装置の開発は目まぐるしいものがあります。 それら道具の利便性が良くなれば治療の質が向上しますが、この道具を使えば治るというものはありません。 道具に進化はあったとしても人体の構造は近代医学が発達したころと比べてさほど変化はないでしょうから、 治療を行うための専門的知識やコンセプトが最重要なのです。